波形に見える痰の貯留
- 2008年11月12日 05:50
- 人工呼吸
「2時間毎に」などの気管吸引。
気管吸引を行うタイミングの判断材料は,バッキング(non ファイティング),呼吸音の変化,SpO2の低下,呼吸パターンの変化など。また,人工呼吸器のモニタリングで確認できる判断材料として,1回換気量の低下,最高気道内圧の上昇,気道内圧やフロー波形の振動などが挙げられます。
今回は,これらの現象の中で,グラフィック波形の描写機能を搭載した人工呼吸器で確認できる「痰の貯留を示す(かもしれない)波形」を見てみましょう![]()
下の画面はEvita4の波形画面。圧波形とフロー波形を表示しています。当院では,Evita4はICUのみの使用ですが,当院の一般病棟で使用されているSavinaも波形を表示できます。
痰が貯留しているかもしれない―![]()
なぜ,「ブルブルは痰の貯留だ
」と断言しない(できない)かというと,波形がブルブルする原因は痰の貯留だけではないからです。
波形のブルブルは,呼吸器回路(ジャバラ部分やフレックスチューブ(カテーテルマウント)など)に結露水がタプタプと溜まっているとか,気道攣縮が起こっている時などにも見られます。
ですから,単に「波形にブルブルがあるから痰が溜まっている!副雑音(肺雑音)も聴取するし,SpO2も下がっている。吸引するぞ!
」では危険なのです。
なぜなら,気管吸引は気道攣縮を誘発することもある侵襲的な手技だからです。
気管攣縮を起こした際にも波形のブルブルが確認できます。気道攣縮では気道内腔が狭窄し換気量が減少します。そして,SpO2も下がります。副雑音も聴取します。
しかし,副雑音は副雑音でも痰貯留している場合に聴取されることが多い「coarse crackles(コースコラックル)」とは異なり「wheeze(ウィーズ)」という狭窄音が聴取されます(痰貯留と気管攣縮の両者がある場合はどちらも聴取される)。このような時に気管吸引を行うと,さらに気管攣縮を増長させてしまいます。
ここでもうひとつ注意。狭窄音が必ずしも気管攣縮かと言ったら,これまたそうではありません。例えば,加湿不足などにより痰が硬くなってへばりつき,気管チューブの内腔が狭くなった時にも狭窄音を聴取します。
気管吸引を行うタイミングを判断する徴候は,どれか1つというものではなく,これらをということが重要です。なぜなら,ここまで書いたように,これらの現象はそれぞれ複数の原因が考えられるからです。
また,どこに痰が存在するのかということもポイント。気管吸引で吸引できるのは主気管支までの深さ。ただし,吸引カテーテルを挿入する深さは気管チューブ先端から気管支に向かって3~5cm程度,気管切開時は15~20cmとされています。ですので,実際には,私たちが行う気管吸引では気管分岐部(カリーナ)手前までの気管までが吸引できる範囲ということになります。![]()
画像をClickすると大きな画像が表示されます。
痰が溜まっていたとしても気管までになければ,侵襲を与えるだけの手技になってしまいます
。排痰が必要な場合は「とりあえず吸引」ではなく,水分管理,加温加湿管理,体位ドレナージ,患者指導などを含めたケアが必要です。
気管吸引は,本当に痰が存在するのか?患者自身で出せないのか?気管にあるのか?本当に吸引をしなければならない状態なのか? ― のアセスメントを十分に行った上で,本当に必要な場合のみ行う侵襲的な処置です。
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